Viva Internet!!!

改めて、インターネットって素晴らしい!と思える出来事が。

今から18年位前の春、私は東京・銀座にあった小さな広告代理店に入社したばかりの新米コピーライターでした。
当時は、糸井重里さんやら林真理子さんといった有名なコピーライターの方が連日の様にテレビに出ているご時世で、ミーハーな私は極単純で不純な動機でその職業に憧れ、神戸から単身上京し、新生活を始めたばかりでした。

さて、その小さなオフィスには数名の男性コピーライターがおりました。皆、「新卒の若い女の子」というだけでチヤホヤしてくれそうだったのに、そこに1名だけ、どうも他の方とは違ったオーラをビンビン飛ばして座っている人がいたのです。パリッとした印象の白いポロシャツにチノパン、私がイメージしていた「業界人=真っ黒」とは明らかに違う爽やか系。こちらに向けられている背中からは「新人だからって甘えてんなよ」というメッセージが痛いくらいに伝わってくる。仮にその方のお名前をここでは「星の王子様」としておきましょう。

新人に与えられる仕事なんて、「使い走り」程度のものです。「これ届けてきて〜」「あれ取りに行って来て〜」、当時はまだ写植で原稿を作っていた時代です。そしてやっとオフィスにいる時間ができたかと思い、張り切って「何をしたらいいですか?」と聞くと、「気にいったコピーがあったら原稿用紙に書き写しなさい」…。そして私は女性雑誌のページから、ただひたすらコピーを原稿用紙に手描きで書き写すという作業を繰り返しておりました。

王子様はいつも机に向かって何かをコツコツと書き続けていました。みると、いたずら書きのようなイラストというか、なんというか。でもそれがまたとっても上手。そしてちゃらちゃらした新人=私などには興味がないみたいに、最小限のおしゃべりしかなく、夕方5時半になると一番最初に帰ってしまう。そんな王子様を実は私は「なんと格好いい」と思い、密かに憧れていました。これぞ、仕事のできる男の姿と思った訳です。

残念なことに、その後まもなく王子様はそのオフィスを辞めて、別の会社へ移ってしまいましたので、後に私がなんとか一人前になって仕事をするようになった姿をお見せするチャンスには恵まれないままでした。

ところがこういうことがあるものですね。
つい最近になって、ひょんなことから、その王子様のブログにたどり着くことができたのです。懐かしい名前に感激し、読み覚えのある文章に感動し、調子に乗って一気にメールを書き上げました。20年近くも前のことだし、以来一切音信不通であるし、もう私の名前すら覚えてもらっていないかも知れない…。そう分かっていながらも、20年の月日を経て、聞きたかった事、言いたかった事がどんどん溢れてきて、ちょっと感情的な内容になってしまいました。返事は期待しないでおこう…。

するとなんとすぐに返信が届けられたのです。とても温かい内容のメールでした。私は一気にあの春の新卒新米コピーライターに戻っていました。もっといろいろ教えて頂きたかった、私が頑張っている姿を是非見て頂きたかった、いろんな思いがこみ上げてきますが、でも何よりもここでまた縁がつながったことに感謝したい、そう思いました。

インターネット、メール、そんなものは20年前にはなかったものです。
素晴らしい時代にバンザイ!