Summer 2010 in Japan

この夏は、4年ぶりに帰国した日本で過ごした。いやぁ、暑かったのなんの。朝起きた瞬間から、まさに言葉通り汗が流れ落ちてくる。暑さもさることながら、あの湿度の高さ。本当にまいった。NYの山の中では、日本並に暑い日はあっても、湿度はあそこまで高くないので、結構快適に過ごせる。そういう夏に慣れていたので余計に堪えた。


それにしても、どうしてこんなにも時間が足りないのか、というくらい、毎日あっという間に過ぎていって、そうして1ヶ月は本当に短く感じられた。滞在先である実家が、都心からちょっと離れていることもあり、ささっと出かけられないという事情もあって、いくつか遣り残したことがあったのは残念ではあるが、心待ちにしていた温泉はたっぷりと堪能し、「あぁ、これぞニッポン!」と自国に戻った喜びをかみ締めた。


いろんな「びっくり」もあった。まず新型(というのかどうか)回転寿司店にはびっくり。注文をコンピューターでして、それが「新幹線」で運ばれてくる。ジョッキ生ビールの自動販売機も、泡を上手に注いでくれるのでびっくり。
「スーパー銭湯」と呼ばれる温泉とお風呂屋さんが一緒になったような浴場もびっくり。設備も素晴らしいし、お風呂の種類もものすごくて、お風呂好き日本人の新しい娯楽になっているのが納得できる。「友達同士でお風呂」という感覚も今なら普通のことなのだろう。
大好きな町、銀座にも驚かされた。いや、もちろんその変貌振りは話には聞いていたのだけれど、いざ行って見るとやっぱりびっくり。「銀ブラ」なんて言葉に象徴されていた頃の銀座は何処へ?アジア系の外国人を乗せた観光バスが何台もやってきて、「アバクロ」やら「フォエバー21」へ客を降ろしてゆく。だいたい、「アバクロ」や「フォエバー21」が銀座にあるということ事体がびっくりだ。こういう店は渋谷系ではないの?


その「アバクロ」へ足を踏み入れた。そしてまたびっくり。1つのフロアが狭いので、なんと店はビル11階建ての構造になっている。客はまず1階からエレベーターに乗せられて最上階へ、そしてそこからは各フロアを見ながら螺旋階段でまた下まで降りてくるという仕組みだ。アメリカではまずあり得ないだろうな。そしてその1階のエレベーター前のロビーには半裸のモデル風男性店員が立っていて、入店してくる客に笑顔を振りまいていた。「半裸」と書いたのは、上半身は裸で、下はジーンズなんだけど、そのジーンもぎりぎりのラインまで下げてあるので、まぁ「半裸」と表現するにぴったりな感じ。これって確かアメリカでも当初やっていたことだけれど、青少年に対する影響がなんとかでと問題になり取りやめになったというような話を聞いたことがある。日本はどうだろうな。だって、その「半裸」男と嬉しそうに写真撮ってる人がたくさんいたもんな。変な国だぜ。
そして「アバクロ」のびっくりはまだまだ終らない。エレベーターに乗ると、これまたモデル風(つまり、この店では外見重視で店員を雇っているということのようだ)の男性がいきなり英語で説明し始めたのだ。そして必ず最後に「チェッキラウト!(Check it out!)」とつける。なぜ?どうして?そういえば、ユニクロも会社内の公用語を英語にするとかなんとかやっているらしいと聞いたけど。一向に腑に落ちない。
私は思わず「あなたは何人?どうして英語で話しているのか?」と聞いてしまった。だって、普通は「どうして?」と思うでしょうに。すると彼は「僕は日本人なんですが、会社がアメリカの会社なので、店では英語を話すようになっているんです」と返答してきた。これまた腑に落ちない。
店内はものすご〜〜〜く暗くて、大音量の音楽ががんがんかかっている。クラブ仕様ってこと?それを裏付けるように、とあるフロアでは黒人の男女店員がその音楽に合わせてただひたすら踊っていた。彼らはあのために雇われているのだろうか?
ちなみにうちの近所にあるモールでは「アバクロ」は早々に撤退したけど。今度銀座に出向く時まで、この店はそこにあるのだろうか?


その銀座では老舗虎屋でおいしいおいしい宇治金時を頂いた。さすがは高級菓子店だけあってサービスも素晴らしく、お茶も冷たいものと熱いものとを両方出してくださったり、言うまでもなく店員の方の振る舞いも大変心地よいものだった。
私にとっての銀座はこれでなくっちゃ。


おいしいもの、といえば今回もまぁたくさん食べたこと、食べたこと。日本に帰る楽しみはそこにあると言っても過言ではないし、やっぱり馴染んだ味は体の芯から「おいしい!」と思えるものだ。今回は嬉しいことにお寿司を頂くチャンスがとても多かった。それからラーメン。私は3食ラーメンでも構わないくらいの麺好きだから飽きもせず食べ続けた。ビールもおいしかったなぁ。丁度この夏はカロリーがなく、アルコール度のない「ビールもどき」なんてのが流行ってたみたいだったけど、日本のビールのおいしさは断トツだと思う。カロリーなんか気にしないでごくごく飲みたい。


親しい友達、昔の仕事仲間との素敵な再会もあった。みんなが再会のために時間を作って集まってくれるという事実ほど嬉しいものはない。あれから何十年も時が過ぎているのに、会えば変わらず昔のままで。こういう仲間は、他ではもう手に入れることはできないだろう。あの時出会えたことに感謝、そうしてこうして続いてゆく縁に感謝。


同行した6歳の息子にとっては、これで3回目の日本だったのだけれど、以前の記憶が全くない彼にとっては、今回の旅の全てが初体験。電車を見るのも乗るのも嬉しくて大興奮し、自動販売機でお気に入りのドリンクを購入するのも楽しくて、それからラーメンと餃子のおいしさにすっかりはまって、初めての海水浴で海の水はしょっぱいことを体験した。
そして母として嬉しかったのは、彼の日本語力がぐんと勢いを増したことだ。まだまだ日本の6歳児のようには話せないにせよ、3単語くらい並べてなんとか会話にできるようになった。そして、それは、こちらに戻ってきてからも続いていて、私とはごく自然な流れで日本語を口にするようになっている。このままそのやる気を伸ばしてあげたい。


8月の終わり、たくさんの思い出をスーツケースにつめて、私はまたここに戻ってきた。

そして9月。秋深まるNY。