「トレイディング・スペース」というTV番組のこと

アメリカのTV番組は日本といろいろ違うことが多くて、面白かったり驚いたり。若い男女が一つ屋根の下に暮らす様をドキュメントする「リアル・ワールド」、交際中の男女たちが皆カップルで参加し、旅先で他の彼女、彼とひともんちゃくあったりする「テンプテーション・アイランド」(だったと思う)、ベイビーが生れるその時までのドキュメント「ベイビー・ストーリー」とか、とか。挙げ出したらキリがないけど、ホントアメリカ人って他人ドラマが好きなのね〜とつくづく思うわ。

さて、そんな中。私が特に好きって訳じゃないんだが、暇があると観てしまう番組がありまして。そう、それが「トレイディング・スペース」。英語だと「Trading spaces」だから意味がわかりやすいかな。つまりは「場所を交換しましょ」といったような趣旨なのですが、ここに登場するのは家族同士が仲良しの奥さんとダンナさんのカップル。その2組が、1泊2日の予定で互いの家に泊まり込みで、お互いが決めた一室を丸っきり模様替えしてしまう、という企画なのであります。例えば、寝室と決めたらば、相手のカップルはその部屋を予算内で「好き勝手」に替えていいわけ。つまり「こうして欲しい」とか口出しもできなければ、その1泊2日の間に様子を伺いに行くこともできない。まさに「好き勝手し放題」、もちろんその間に、自分達だって友達の寝室を丸っきり替えてしまっているわけだけれどね。

で、この「替える」が、すごいのですよ。日本で言う模様替えの理解を大幅に超えてしまって、壁は取り払うは、色は塗りかえるは、家具だって、作っちゃうし、色も塗っちゃうし、とにかくやりたい放題なのです。一応、それぞれのカップルにはプロのコーディネーターと大工さんがつくので、最終的に間違いはなく仕上がるようになってはいるのですが、「ああ、そんな高級そうなチャイナ・キャビネット(食器棚)に、ペンキなんて塗っちゃっていいの〜〜」「げ、そんな趣味の悪い色ってあり?」と、観ている私はつっこみたくなるシーンが山盛り。それが、私がこのショーを見てしまう最大の理由であるとは思うんですが。

つい最近観たのは「プロバンス風」に仕上げるというテーマのダイニングの模様替えで、これもすごかったな。コーディネーターが「このキャビネットをクリーム色に塗るの」というと、奥さんの方が「でも、これって彼女のお気に入りで、色を塗りかえるっていうのはかなりショックだと思うわ」と、友達ならではの発言をした。ところがコーディネーターは「でも、これをクリーム色に塗り替えないと、プロバンス風っていう今回のテーマには合わないんだモノ」と、しつこく説得。最終的には「大丈夫よね〜」と自分に言い聞かせるように、友達を気遣った奥さんの苦々しい顔がインサート。観ているこっちだって苦笑い。さて、ショーの最後で自分の家に目隠しをされて入ってきて、変わり果てたダイニングを見る、その瞬間の表情といったら!まさにこれが「生」のリアクションというものですね。で、この時はなんとかOK、互いに模様替えはうまくいってたみたい。でも最後まで「ごめんね、あのキャビネット、色塗り替えたんだけど…」と奥さんまだ言ってたよ(笑)。

ところが、毎回そうはうまく行かないのですよ〜。なんと最後に、奥さんが泣いてしまった回があった!!その時は、前にあったふわふわのカウチが取り払われて、板で枠を組んだだけのベンチみたいなのに代わっていたのでした。それを見た奥さん「こんなんで、ゆっくりくつろごうなんて気分になれないわ…」と、カメラがあるのも忘れて号泣しはじめた。確かに、おっしゃる通りです。私も経過を見ながら「今回は、ちょっとまずいんではないか」と思っていたから。だって、どうみたって前の方がセンスもいいし、くつろぎ度も高いように、私にだって見えたぞ。

こうなると、この後、お互いの友人関係にまでヒビが入ってしまうんではないか、と心配してしまう。泣きじゃくる奥さんに、お友達ったらかける言葉もない様子だし…。ね〜、だからね。そんな危険をおかしてまで、TVに出て、部屋を模様替えしたいかい、と私は思うね。まぁ、収録が済んだら好きなように直せばいいんだろうけど、壁まで取り払われたら、いくらなんでもすぐに直すなんてことも無理だしね、壁の色も当分はそのままで我慢しないとね…。

こんな変な番組がまだまだいっぱいあります(笑)。