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「コピーライターの世界は、なぜ胡散臭いのか? 改めて、機能する言葉を」

先週、このNews Digで書いたエントリー「TCC賞で考えた、広告の機能とポエム化」は、おかげ様で広がりを見せ、特にコピーライターの方々の間で拡散した。広告業界や広告賞を分かっていないなどのご批判を頂きつつも、概ね好評だった。その反応を見て、ますますコピーライターの仕事に関心と疑問を持ってしまった。

面白法人カヤックの長谷川某が、弁明的なエントリーを意識の高そうなツール、noteで書いていた。「コピーをポエムって言うな。|コピーライター長谷川哲士|note(ノート)」。率直に、よく分からなかった。もっとわかりやすく書いて欲しい。私に対する批判なのか、弁明なのかよく分からなかった。冒頭のリクルートの広告をいじった写真とコピーからして不愉快だった。

このエントリー自体が、コピーライターの残念な実態、劣化を証明していると言えるだろう。これこそ、ポエムじゃないか。現代のコピーライターが機能 する言葉を使えていないことを物語っている。そして、この、わざわざnoteを使う、改行を多用する、へりくだっている風の姿勢を見せるなどの意識高そう な、自意識過剰そうな振る舞いが、コピーライターへの誤解をうんでいるのではないだろうか。

それと比較するのも失礼というものだが、タカハシマコト氏のエントリーは、誠意があって良かった。「ポエムと言われたら、それはポエムだ。|Makoto Takahashi|note(ノート)」。伝わる言葉、機能する言葉で、さすがコピーライターだと思った次第である。

そう、ポエムかどうかを決めるのは受け手なのである。そして、「伝える」と「伝わる」は違う。前のエントリーでも問題提起したことだが、機能することが大事なのである。「伝わる」ということは機能しているということだ

ポエム化については、「そんなものは、昔からそうだろ」というご批判も頂いた。もちろん、広告におけるゆるふわな表現、ポエムっぽい表現は以前からあったようにも思う。

ただ、そのポエムにしても「機能する」ものであり、「意図した」ものでなければならないと思うのだ。まともなコピーを書けない者が多数で、書けない ことによる結果としてのポエム化に関してはまさにコピーライターの世界の劣化を物語っていないだろうか。人を動かす言葉をコピーライターは書いているのだ ろうか。

コピーライター批判になってしまったが、もともと、私が素朴な疑問を持ってしまったTCC賞自体について、ますます疑問を持ってしまった。

これからちゃんと調べるが、外野から見ると、ぶっちゃけたところ、広告業界の、しかもごく一部の人たちによる内輪の賞になっていないか? 審査員に 外部の人はどれだけいるのだろうか? 広告業界の中の人だけで選んでいるとしたならば、内輪の賞と言わざるを得ないだろう。そんなことはないと信じたい が、自分が関わっている作品を選んでいたりはしないだろうか。

前回のエントリーでも書いたが、新人賞も含めた35の受賞作品のうち、私が知っているのは2つだけだった。いや、あくまで私という人間におけるサン プルにすぎず、これで判断するのは良くないのだが、とはいえ、普通の人の生活動線において、テレビ広告を見る時間は減っているのではないかと懸念されるわ けで。また、「これが受賞作品かよ?」と思うものもあるわけで。

そろそろ広告業界をあげて、TCC賞のあり方とか、業界の浮沈とか、コピーライターの質の向上などに取り組むべきなのじゃないかと心配してしまった。

温厚なことで知られる私が、珍しく批判的な文章を書いているなと、読み返してみてぞっとしたが、こう辛辣なことを書くのも、私は広告と、そしてコピーの力を信じていたいからだ。

求人広告、宿・ホテルや観光地の広告という世界で働いていた。クライアントは、一生懸命広告費を捻出し、広告を掲載する。営業・制作はじっくりヒア リングし、広告を考える。その言葉で人の人生が、変わる、動く。採用担当者をしていた頃も内定者にヒアリングをすると、求人広告やパンフレットのコピーが その学生の人生を動かすことを実感するわけで。もちろん、これは求人広告、宿・ホテルや観光地の広告が、行動を促すという機能を担うものだから、当然なの だけど。

改めて、広告、コピーは機能するものでないといけないと思うのだ。

コピーは、広告は、人生を、時代を動かす力を持っているのだ。その誇りと責任をコピーライターには認識してもらいたい次第である。

 

【プロフィール】常見陽平(つねみようへい) 評論家・コラムニスト
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社を経てフリーに。
雇用・労働、キャリア、若者論などをテーマに執筆、講演に没頭中。