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「世界一の寿司職人」を追うドキュメンタリー映画

銀座にある寿司屋「すきやばし次郎」の、85歳になる店主である小野次郎氏の生き様に迫った、アメリカで製作されたドキュメンタリー映画『Jiro Dream of Sushi』を見た。

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ミシュランで3つ星、世界各国のシェフや著名人から「世界一の寿司」と言われているというその寿司は、前菜などと言ったものはなく、店主がその日の仕入れをベースに細密に品書きを組み立てる「おまかせメニュー」(3万円から)のみ、その寿司が出される順番は、映画にも登場する料理評論家の山本益博氏によれば「まるで完璧に奏でられた音楽のよう」であるらしい。

これを見て新たに思い知らされたのは、本来の寿司というのは、単に握られたシャリの上に小さな刺身が乗せられたものでは、決してないということ。さらに、次郎氏の握る寿司こそが真の寿司であり、くるくると回っている寿司は模造品に過ぎなかったのだな、とすら思うほどだ。

寿司の美は、シャリの味や質はもちろん、その温度まで綿密に調整され、そして、脂の乗り方などによって変化する魚の身の熟成の仕方、下味のつけ方、その切り方と厚みまでが全て計算されつくした最高の調和の中でのみ生まれるのだ。

回転寿司や他の安価な寿司が普及し、高級であった寿司が、日常的に気軽に食べられるようになったことは喜ばしい事実ではあるが、一方で、そのことによって、本来あるべき姿の「寿司」の伝統、真の職人気質が失われつつあるのは否めないであろう。だからこそ、次郎氏の長男、次男によって、あるいはこれによって感化される人々によって、この貴重な伝統が次の世代の日本へ、正しく受け継がれていくことを願ってやまない。

世間的には寿司の世界で頂点にたどり着いたとされる職人である次郎氏は言う、「まだまだ自分は完璧ではない」と。日々日々、さらに良くするにはどうしたらいいのだろうか、と考え続けているのだそうだ。

それにしてもDavid Gelb監督は1983年生まれとまだ若い監督なのに、素晴らしい作品を作り出してくれたものだと思う。外国に住む日本人である自分は、この映画で描かれた古い日本人気質とでも言おうか、つまりは、己の得を省みない独特のこだわりや、自らに厳しさを課す生き方の信念、一度決めたらなにがあってもしがみつていく根性(次郎氏はそれこそが真のプロへの道である、と語る)といった様なものが、どのように、あるいはどれだけ、この映画を見た外国人に伝わるかが興味深いところではある。

あぁ、それにしても、画面に次々と映し出される寿司の姿の魅惑的だったことと言ったら。丁寧に握られたそれは、画面を通しても一流の品であること が伝わってきた。それに、あの「卵焼き」の見事なこと!寿司を愛する日本人としては、こりゃ死ぬまでには必ず食べておかなくちゃ、と思うのである。

 


Jiro Dreams of Sushi Official Trailer #1 - Jiro Ono ...