悲しい出来事

それは土曜日の深夜のことでした。「深夜」といっても、実際には午前2時半を過ぎていたので、「日曜の未明」と言う方が正しいのかもしれません。

寝静まっていたところに、家の外で、突然「ボン!」とそれはものすごい音がしたのです。めったなことでは起きない主人が飛び起きたくらいだから、それは相当な音だったに違いありません。とにかく驚いて、すぐに2階の窓から家の前の通りを見ましたら、なんと、うちの通りの向かい側に建つ家の前の大木に乗用車が突っ込んでいたのです。「あ、事故だ」と、すぐに911しなくては、と思ったのですが、よくみると、すでにポリスカーが現場に止まっています。そしてオフィサーが懐中電灯を手に車に近寄っていくのが見えました。
事故通報したにしては、ポリスの到着が早すぎるな、とは思ったのです。そしてこの原因はすぐに解明されました。
どうやら、その車はポリスの追跡を受けていたらしいのです。
なんでも、近所の中古車屋から盗んできた車を猛スピードで運転中に、地元パトロール中だったポリスカーに発見され、そして追跡されていた、とのこと。

とにかく、最初に街灯にぶつかって、その街灯をなぎ倒した後に大木に衝突して止まった車は、車体が白だったせいもあって、暗闇でもその悲惨な様子が見て取れます。
現場には次々に救急車、消防車、ポリスカーが集まってきて、そしてこんな深夜であるにも関わらず、近所の人がどんどん野次馬として家から出てきました。
うちの前は一瞬にして「事故現場」と化しました。

ところが、救急隊員が準備をして待っているのに、なかなか事故に遭った運転手が運び込まれてきません。そのうち、大型の消防車がやってきて、現場を大型のライトで照らし始めました。この大型の消防車が通りに止まったことで、現場には「目隠し」ができ、家の2階の窓から様子を伺っていた私のところからは事故車は見えなくなってしまったのですが、しばらくすると、大きなモーター音が聞こえ始めたのです。
どうやら運転手を事故車から運び出すことができないらしく、車の屋根を切っているようでした。そして30分以上が過ぎた頃、ようやくストレッチャーが小走りで救急車に駆け寄っていく姿が見えました。しかし今度は、その救急車がなかなか出発しないのです。もう私は運転手の安否が心配で心配でたまりませんでした。

そして、事故発生から1時間ほどが過ぎた後、救急車も去り、消防車も去り、現場には数台のポリスカーだけになりました。野次馬もさり、静かになった現場に残された事故車だけが暗闇でおどろおどろしく光っているような気がしました。

結局、私は再び眠りに付くことはできませんでした。

翌日、この事故の被害者が18歳の青年だったこと、そしてこの夜、彼が帰らぬ人になってしまったことを知りました。地元の高校を退学して、ファーストフードチェーンで働いていたそうです。
会ったこともない若者だけれど、胸が痛んで仕方がありません。
ご冥福をお祈りしようと思います。

f:id:Lacy:20130421024200j:plain

f:id:Lacy:20130421024202j:plain

f:id:Lacy:20130421024427j:plain

f:id:Lacy:20130421024552j:plain

f:id:Lacy:20130421024609j:plain

f:id:Lacy:20130421070709j:plain

f:id:Lacy:20130421070720j:plain