オバマ大統領 特別寄稿 「米国、私のビジョン」

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(CNN) この数日間、私たちは皆、今世代最大級の暴風雨にしっかりと目を向けてきた。亡くなった人々を悼むとともに、人生を一変させる被害を受けた人々には復旧と再建に必要な限り、支援を続けることを約束する。

なぜなら困難に見舞われた時にこそ、米国は最大の良さを発揮するからだ。平時に私たちを消耗するささいな食い違いも、瞬時に消えうせる。嵐の間は民主党も共和党もなく、だれもが同じ米国人となる。私たちはこうして力を合わせ、最もつらい時を切り抜けるのだ。

米国は4年前、2カ所での戦争と世界大恐慌以来の経済危機で窮地に陥っていた。だが私たちは力を合わせて闘い、ここまで立ち直った。イラク戦争は終 わり、オサマ・ビンラディン容疑者は殺害され、英雄たちが帰還している。産業界では過去2年半のうちに550万件近くの雇用が生まれた。住宅価格や確定拠 出年金が上向いて、石油の対外依存度は過去20年間で最低となり、自動車産業も息を吹き返した。

まだ目的地には到達していないが、私たちは確実に前進を遂げてきた。そして6日の投票日、米国はその強さの由来を巡る2つの根本的に違うビジョンのうち、いずれかを選ぶことになる。

米国の繁栄の基礎となったのは中間層の強さだと、私は確信している。少数のトップ層が豊かな生活をする一方で大多数が暮らしに困っている状況ではうまくいかない。だれもが公平にチャンスを与えられ、等しく役割を果たし、同じルールに従う時、国全体がより豊かになる。

クリントン元大統領(民主党)は在任中、国民の技能とアイデアに投資すれば、雇用と産業の発展は必ずついてくると考えた。財政赤字の削減と同時に職 業訓練や教育、研究、技術開発、医療、退職者支援に予算をかけられるよう、最富裕層に多少の負担増を求める経済政策を取った。その結果どうなったか。2期 目が終わるころには2300万件の新規雇用が創出され、所得が増えて貧困率が低下した。財政赤字は転じて史上最大の黒字となった。

ロムニー前マサチューセッツ州知事が示す道は、8年前、クリントン元大統領の退任後に試みられた政策だ。トップ層に一般の人々とまったく違ったルー ルを認め、財政が苦しいのに富裕層への減税を続け、企業に雇用と利益の国外流出を勧め、大銀行や保険会社の規制を緩和するという考え方だ。これらはそもそ も、現在の苦境を招いた政策そのものである。

選挙戦の終盤で、ロムニー知事は変革の旗手を名乗り始めた。私からは以下の言葉を贈ろう。富裕層を中心とした5兆ドルの減税や、軍から求められてもいない2兆ドルの国防費、大銀行や保険会社の権限強化は確かに変革だ。しかし私たちが必要としている変革ではない。

真の変革がどんなものであるか、私たちは知っている。それを今、あきらめるわけにはいかない。

変革とは、どんな年代の人でも、良質な職に就くための技能と教育を得られる国にすることだ。私たちは、銀行が数十年間にわたって学生ローンに過重な 金利を課してきた状況を改め、大学に進学する数百万人の費用負担を軽減した。今後は高技術、高賃金の雇用が中国へ流れないよう、数学と科学の教師を10万 人採用し、コミュニティー・カレッジでは地域産業界がまさに今必要としている技能の訓練を、200万人の労働者に提供する。

変革とは、米国を次世代の製造業と技術革新の本拠地とすることだ。「デトロイトを倒産させろ」と言ったのはもう1人の候補者であり、大統領として米 国の労働力と創意に賭けたのは私だ。次は税制改革によって、海外へ雇用を流出させる企業でなく、国内で雇用を生み出す企業を奨励したい。また、利益をあげ ている石油企業への補助金を停止し、クリーンエネルギー分野の雇用と技術開発を引き続き支援して、石油輸入を半減させたい。

変革とは、戦争の十年間を終わらせ、自国の国づくりに取り組むことだ。私が軍最高司令官である限り、米国は世界最強の軍によって敵を追い続ける。だ が同時に、イラクとアフガニスタンの戦争終結によって生じた余力で負債を払い、米国内の道路や橋や学校を再建すべき時が来ている。

変革とは、支出を削れる所で削り、財政赤字を削減することだ。最富裕層に対し、クリントン政権時代の所得税率に戻るよう求めることだ。私はこれまで に共和党と協力して、1兆ドルの支出削減を達成した。今後もさらに削減を進める。しかし、億万長者への減税を埋め合わせるためにメディケイド(低所得者向 け公的医療保険)を受給する何百万人もの貧困層や高齢者、障害者から保険を取り上げたり、メディケア(高齢者向け公的医療保険)をバウチャー方式に変更し たりする案に同意するつもりはない。

トップ層の人々は、擁護者をワシントンへ送り込む必要がない。擁護者を必要とするのは、私が夜ごとに手紙を読む人々、毎日遊説で出会う人々だ。ラス ベガスのホテルで残業する料理人や清掃作業員、バイオテクノロジー分野のキャリアを目指して教育を受け直す55歳の家具職人、教室にひしめく生徒たち1人 1人に十分な時間が費やせないと話す教師。いつか大物になりたいと夢見るその子どもたち。事業を拡大し、従業員たちに報いようとする中小企業の経営者。こ うした人々には、ワシントンの擁護者が必要だ。

この人たちが豊かになれば、米国も豊かになる。今必要なのはそういう変革である。私たちが着手したことをやり遂げる時だ。子どもたちの教育、労働者 の訓練、雇用創出、新エネルギー、そして新たなチャンス。あなたがだれで、どこの出身で、どんなスタートを切ったとしても、努力すれば成功できる、そうい う国であり続けるために。

私たちが信じる米国は手の届く所にある。私たちが望む未来は視野の中にある。だから6日には、皆さんの1票をお願いしたい。