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「Battle Hymn of the Tiger Mother」

つい数週間前に、イェール大学法学部の教授であるAmy Chua氏が出版した本が、今、ものすごい話題になっている。もっとも「話題」と書くと聞こえがいいけれど、実際には「物議をかもし出している」ということで。

ことの発端は、彼女がウォール・ストリート・ジャーナルで「Why Chinese Mothers Are Superior(なぜ中国人の母親は優れているのか)」といった趣旨の記事を書いてから。
「中国人の子供達は何故こんなに優秀なのだろうかとアメリカ人は不思議に思っています。多くの数学の天才児、神童と呼ばれるバイオリニスト、ピアニストの子供達を生み出す中国人は家庭で一体どんな教育をしているのか、どんな生活をしているのか、そして自分達もできるのかと多くのアメリカ人が思っています。どんな英才教育をしたらこんな結果がでるのか私がお教えしましょう。私の方法で成功したのですから。」と始まり、「うちの娘たちが決して許されないこと」のリストが記されている。
・友達の家に泊まりにいくこと
・放課後友達と一緒に遊ぶこと
・学校の芝居に出ること
・学校の芝居に参加できないと文句を言うこと
・テレビ、コンピューターゲーム
・自分で課外活動を選ぶこと
・A以下のグレードを取ること
・体育とドラマ以外の全ての科目で1番にならないこと
・ピアノ、ヴァイオリン以外の楽器を演奏すること
・ピアノかヴァイオリンを演奏しないこと

そして「チャイニーズ・マザー」と「ウェスタン・マザー」の違いを彼女の視点で述べてゆく。

「私の白人の知人でも自分で『私は厳しい母親だ』という人がいますが、そんなものは中国人の母親に比べたら、足元にも及びません。彼女は自分の子供に、楽器の練習を最低30分、最高1時間はさせるといっていますが、これが中国人の母親なら最低1時間から始まり、2時間、3時間も続けさせるなんていうのは当たり前のことです」

「中国人の母親は白人の母親には想像できないこともします。中国人の母親は娘達に向かって『おデブちゃん、ちょっと痩せたらどう?』などと言えますが、白人の母親は決して核心には触れないで、せいぜい『健康』がどうのこうのというまでです。それでも結局拒食症や過食症になって、セラピー通いをしたりするはめになっているのです」

「中国人の母親は子供達にAを取るように命令できます。が、白人の母親は『ベストを尽くしなさい』というまでです。中国人の母親なら『あなたが怠けているから、他のクラスメートに先を越されているのよ』と言うでしょう」

そして「中国人の母親と白人の母親との間には、大きく3つの違いがある」と指摘。
1:「白人の親達は、子供の感情、自尊心に対して、非常に心配をする。もしも子供たちが失敗して自信をなくしたらどうしよう、と心配し、常に子供たちを『負け犬ではない』と励まし、子供たちの精神面に配慮します。一方中国人の親はそんなことはしない。もっと強くなれと叱咤し続けるだけです」

「もし子供がA-(4.5)をとってきたら、白人の母親なら子供を褒めるところでしょうが、中国人の母親なら恐怖で息が止まりこの成績は何だと許さない。では子供がB(4)をとってきたら? それでも白人の母親なら褒めるでしょう。或いは子供の自尊心が傷つかないように「今度はAを取りなさいね」と優しく言い、この子がAを取れないのは学校の教科課程がおかしいからだと思ったりする。挙句の果ては先生との面談をリクエストしたりとか。それでもAが取れないなら先生の教え方に問題があるとか言い出す。」
「もし中国人の子供がB(4)をもらってきたらどうなるか。ってかそんな事は絶対にありえないのだけど、中国人の母親ならば髪の毛を逆立てて怒りが爆発。 その後はAが取れるまで何百回もテストの練習をさせるでしょう。中国人の母親は努力さえすれば絶対にAが取れると思っているし、取れないのは勉強が足りないからだと子供に言います。時には子供を馬鹿よばわりしたり、人前で辱めないと子供は強くならないと信じているからです。アメリカのカルチャーでは許されないような言葉も浴びせます。」
「中国人の親たちが子供に『1番を取ってこい』というのは、彼らが1番を取れると信じているからです。そして1番が取れなかった場合、努力が足りなかったせいだと思います。ですから、標準以下の成績は罵倒されることになるのです」
 2:「中国人の親達は、子供たちは親に仮があると見なしています。この所以は正直どこから来ているのか分かりませんが。ですから、子供たちは生涯親にその仮を返すために、親の言うことを聞き、最高の結果を出すことで、親にその仮を返していこうとします。こうした概念は、白人の親の中にはないと思います」
3:「中国人の親達は、子供にとってのベストは何かということをきちんと把握しています。ですから子供たちの欲望を一切無視できます。高校でボーイフレンドを作らせないのも、友達の家に泊まりにいかせないのも、そういう理由からです。」

他にも、ヴァイオリンのレッスンで、できない箇所をやり遂げるまでは「トイレ休憩も、食事も与えない」とか、練習を拒否した時には「あんたの好きなおもちゃを捨てにいくから」と脅かしたとか、まぁ、アメリカ人的には想像だにできないエピソードが続くので、これが「やりすぎだ!」「虐待だ!」と大騒ぎになっているようなのだけれど。

確かに、これが中国式スパルタ教育だとしたら、かなり厳しい教育方法だなぁとは思いつつ、同時に日本人の私には共感できるところがたくさんあるのも事実。世界中でたくさんの中国人が成功している理由はこういうところにあるのかなとも素直に納得できるし。現にこの著者はイェール大学法学部の教授であり、長女ソフィアさんはカーネギーホールでリサイタルをしたピアニスト、次女ルルさんはバイオリニストと成功している。

確かにアメリカ人はなんでも褒めまくる。褒めまくり過ぎると言ってもいい。1番をとっても「Good job!(よくやった!)」、ビリでも「Good job!(よくやった!)」。本当に一生懸命練習して、それでもビリしか取れなかった場合の「Good job!(よくやった!)」ならまだしも、怠けていて適当にやってしまった結果のビリの場合にも「Good job!(よくやった!)」じゃ、子供の能力を押し上げて前に進めてあげることにはならないと思う。そういう場合は「叱咤激励」、それしかなかろう。そしてそれをできるのは親しかいない。自分の子供を知ればこそ、自分の子供を信じればこそ、正しい使い方で「Good job!(よくやった!)」と言ってあげられるはずだ。

肥満の問題にしても、この国にはどうやら「そういうことは親も他人もコメントしてはならぬ」といった暗黙の掟があるようだけれど、他人が口出しできないのは分かるとして、「あんたちょっと太ってきたわよ。食べる量を減らせば?」なんていうのは、「子供の自尊心を傷つける」なんて前に、親の子に対する健康管理の一環としてごく当然ではないのか。そんな風だから肥満問題は一向に解決しないし、むしろ増えている現状。肥満が原因でいじめにあったり、年頃になってややこしい問題を抱え込むよりも、親の一言「もうやめときなさい」で済むんだったら、そっちの方が最終的なダメージはずっと軽くはないだろうか。

「誤解しないで欲しいのは、では中国人の親が子供たちのことを一切に気にしないのか、といったらそれは違います。その反対です。当然のように子供たちのためならなんでもする、そう思っています。ただ、お手本にするモデルが違うというだけです」
「白人の親は、子供たちの個性を尊重し、彼らの情熱を支援し、選択をサポートし、ポジティブな環境を与えてあげようとします。それとは対照的に、中国人の親は、自分の子供を守るための最良の方法は、彼らに自分の能力を認識させ、誰にも負けないスキルを身につけさせ、仕事においても生活においても『自信』を武器に生きていけるようにすることで、将来に備えさえることだと思っているのです」

賛否両論あるのは当然だろうが、この本から学ぶべきことはたくさんあるのではなかろうか。白人でも、アジア人でも、何人でも関係なく。