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大きな人間になろう

息子が参加しているリトルリーグのティームメートのお父さんの中に、「私にだけ」どうも不自然な振る舞いをする人がいるので気に障って仕方がない。「私にだけ」と断定しているのは、彼が他の人とは会話を交わしたり、普通に接しているのを何度も目撃しているからだ。ところが、私に対しては全く違う。具体的に言うと、決して目を合わそうとしないのだ。視線を無理やりこちらにむけないようにしているのがはっきり見て取れる。そのくらいかなり不自然に。
この間は、私が「ハロー」と言ったら、ものの見事に無視された。恐らく本人の言い訳としては「無視したつもりではなく、気づかなかった」とかそんなことだろう。またある時は、駐車場でたまたま車を隣同士に止めていて、互いのドアが同じときに開いたので、うっかりぶつかりそうになり、私は慌てて「あら、ごめんなさい」と言ったが、それには一切反応せずそそくさと車の中に消えていってしまった。

もうどうしたって明らかに私を避けているとしか言い様がなく、しかしその理由に心当たりが全くないので、だから余計に気分が悪い。

私は野球のことはよく分からないし、特に手伝いもできずただ座ってみているだけではあるが、息子のティームメートの親御さんにはきちんと礼儀正しく接していたいし、だからいつも「挨拶と笑顔」は欠かさない。挨拶や笑顔は、別に相手からの「お返し」を期待していいるものでもないから、一方通行、素通りでもかまわないのだけれど、こう露骨に拒否されては、「もう今度からは、彼には挨拶するのをやめよう」と思うのも仕方がないことのように思える。

ところが、その重たかった気持ちがすっきり吹っ切れる出来事があった。

夕食の片づけをしていると電話がなった。電話会社のサービスで、我が家の電話機には相手方の名前とナンバーが表示されるようになっている。フリーダイヤルだったりすると、勧誘の場合がほとんどなので無視するのだが、困ったのは見覚えのない名前と番号の時。今回のそれも全く見覚えのない人からで、それでも局番がローカルだったので受話器を持ち上げた。

息子が通うスクールの先生からだった。近々行われるスクールのファミリーイベントで、デザートを作って持ってきてくれる人を募っているということだった。イベントには参加予定はなかったが、ケーキくらいなら焼いて持っていけるので、そのことを伝え、念のため「もう一度お名前を教えてください」と言うと、「実は、スクールで何度も会っているのよ」と言うではないか。続けて、スクールのマーケティング。・ミーティングでは夫と面識があること、息子のクラスを1度だけ代理で受け持ったことがあること、それから私と息子がスクールで一緒にいるところを何度も見ているし、加えて、「あなたいつも私にハロー!って言ってくれるのよ」なんて言う。「今度見かけた時、私が名乗りあげれば、きっとあなたも、ああ!って思うはずよ」。

これを聞いた時、どれだけ「挨拶と笑顔」を欠かさないでよかったと思ったことか。そうなのだ、どこで誰に見られているか分からない。自分は相手を知らないけど、相手は自分を知っているということは少なくないのだ。さらに、人生はいつ、どこで、なにが起こるか予期できない。私がいつもブスっとしていて無愛想だったら、「あの人にケーキをお願いしようかしら」なんて思ってもらえなかったに違いない。

「あなたいつも私にハロー!って言ってくれるのよ」、その彼女の一言が私のもやもやを吹っ切ってくれた。
相手に無視されたとしても、私が礼儀正しく振舞っている限り、間違って見えるのは彼の方なのだ。そして周囲の人はそのうち気づくだろう、彼の失礼な態度に。

今度は「ハロー」だけじゃなくて、思い切ってなにか話しかけてみようか。