こういう夜もあるんだ

いつもの様に、「今日の夜ご飯はなぁに?」と夕刻オットから電話がかかってきた。あまり日本食を好まない彼の数少ない好物の1つであるはずの「お好み焼きだよ」と言うと、ちょっと間があってから「OK」と言って、「でもやっぱり」という風に、「正直言うと、今晩はちょっとお好み焼きって感じじゃないな」とか言っている。「じゃ、なにがいいのさ?」というと、「スパゲティかな」と。

彼の言う「スパゲティ」というのは、必ずトマトソースがかかっていなくてはならない。和風パスタなんてもってのほかだ。トマトソースならジャーに入った市販品をいつも常備してあるのですぐに用意できるのだが、今夜の彼の様子ではどうやら外食したいということのようだ。「ずっと採点で疲れたから、ちょっと気分転換にね」というのがその弁だ。

ま、私も料理する手間が省けるし、息子もスパゲティなら大好物なので、と、近所のファミリーレストランへ出かけることにした。

さて、家族3人で食事をしていると、隣のテーブルに4人組みが案内されてきた。ふと顔をあげると、家の斜め向かいに住んでいる陶芸家のラッセルとそのパートナーのエイミーが友達とやってきていた。実は私は妊娠するまでの間、毎週月曜日に友達の家で陶芸を習っていたことがあって、その関係でラッセルと知り合いになり、同じ通りに住んでいることが判明したのだが、一方オットはオットで「職場の知り合いがあの家に住んでいるらしい」などと言い出して、ええ?あの家はラッセルの家なんだけど、という感じでラッセル&エイミーのカップルが我々のネイバーであることが明らかになったという経緯があった。

ご近所さんといえども、そうしょっちゅう出会うわけでもないので「久しぶりね」「元気だった?」「クリスマスのデコレーション、とてもきれいね」「(息子に)すっかり大きくなったわね」などとちょっと会話して、お互いのテーブルに戻る。

と、しばらくすると、今度は向こうから「おやおや」と誰かが私たちのテーブルを目掛けて歩いてきた。見ると、家のお隣の家に住むピートとドリスだった。彼らとは私たちがこの家に越してきてからの丸3年、本当に親しくしてもらっている。家の庭には垣根がなく、彼らの土地とつながっているような形になっていて、シェルビーを外に出せば必ず会うし、雪かきシーズンの今なら、毎朝の雪かき時にも顔をあわせて立ち話をする。我家でのパーティには必ず来てくれるし、もちろんついこの間の息子の誕生パーティにも喜んで来てくれた。恐らく来年早々はまた一緒にスーパーボウルを見ることになるだろう。

そんな仲なので、オットが「うちの勘定はあっちに付けといて」なんて冗談を言えば、「いやいや、今晩は彼がご馳走してくれるって言うから来たのさ」なんて言い返してくるピート。隣人とこういう付き合いが出来るのはいいものだなぁと改めて思う。

それにしても、いくら小さな町に住んでいるって言ったって、同じ夜に、同じ通りに住む3家族が、同じ店で、同じ時間帯に食事をしているなんてこと、そうそうあることではないのではないかしら。