クリスマスツリー

我家では例年「本物のもみの木」のツリーを飾ってきたが、オットが今年は「偽者のツリーにしようか」と言い出した。アーティフィシャル・ツリーと呼ばれるものだ。

私にはなんのこだわりもなく、オットのこだわりで「本物のツリー」を飾ってきたのに、どうして今年になって偽者がいいなんていい出すのだろう、と問いただしてみたら、「だって、大変なんだもん」とポツリと言う。

確かに。経験のない人からは想像できないくらい、実はツリーを飾る一連の作業はかなりの重労働だと言っていいと思う。

まずあの大きな重たい木を買いに行くところから始まって、それを車の屋根に積んで帰ってきて、それからよいこらしょと降ろして家の中に運び込む。ツリーはそこそこ見栄えのするサイズにしようと思うと180センチくらいのものを選ばなくちゃいけないし、当然生きている木なので葉はチクチク刺さって痛いし、幹は重くて手の皮がめくれそう。

そうしてやっとの思いで家の中に運び込んでも、それをツリータンクというベースに差し込む作業が待っている。これがまた大変なんてものではない。ツリーをまっすぐ立てなくてはいけないのに、幹が斜めにカットされていたりして上手くいかないことも多いし、一人が幹を支えて、もう一人が幹をまっすぐに立ててタンクに固定するのだが、支える方は腕をあのチクチクの茂みに突っ込まなくてはならないし、立てる方は怪力を発揮しなければならない。

そうして、やっと、やっとタンクに設置できたかと思ったら、固定が甘くてツリーががっくり倒れてきたりして。それが家具に当たっちゃったりして、もう泣き面に蜂なんだもん。

もっとも、我家の二人は不器用であるせいも多分に影響していることは否めない。

「クリスマスは楽しいんだから」「この後に、オーナメントを飾れるよ」と、疲れた心に活を入れてくれるようなことを考えてみたところで、斜めになったツリーがまっすぐになるはずもなく。また一からのやり直し。

こんなことを、毎年繰り返してきたのだ。そりゃ、私だってクリスマスが来るのは嬉しいが、ツリーのことを思うと憂鬱だわ、と何度思ったことか。でも、「ツリーは本物でなくちゃ」って誰かさんが言うからさ、と諦めていたのだが。

ムフフ。敵はもう諦めたらしい。無駄な足掻きはしない。スマートな選択だ。

という訳で、この数日、「偽者でも限りなく本者に見えるツリー」を探して歩いているのだが、今度はそれが難航中。「こんなんだったら、もういっそのこと本物のツリーにしちゃえば」というほど、「どうみたって偽者にしか見えないツリー」ばっかり売ってる。

やっぱり、あの一連の作業を終えたものにしか、ツリーは微笑まないのか。